無難な譜面の作り方


・はじめに

 曲は作ったけど譜面作りに自信が無い、今あるBMSで差分譜面を作ってみたいけど自信が無い。
そのような方は多く存在するでしょう。多分。
それに、曲が良くても譜面が残念であっては、曲がうかばれません。
そのため本日は、自分が思ういわゆる "無難な譜面" の作り方を紹介します。

 なお、この記事を参考にしても、大抵において良い譜面は作れません。
あくまでも、残念な譜面が一つでも減ることを目的としています。ご了承ください。

・キー音にしやすい音としにくい音

 BMSは、ボタンを押すと音が鳴るゲームです。
そのため、キー音として適切な音を選ぶ必要があります。

 キー音に向いている音とは、すなわち埋もれておらず、はっきりと聞こえる音です。
正確に押せなかったり押す場所を間違えたりした場合に、音がずれたり変な音が鳴ったことが分かりやすくなるため、
キー音にははっきり聞こえる音を使うと無難です。
自分で曲を作っている場合は、そのような音が多くなるよう頑張ってみましょう。

・曲の適正難易度とは?

 まず、出来上がった曲を聴いてみましょう。
ある程度プレイ経験があれば、「このパートを遊びたい」という気持ちが湧いてくるでしょう。
それをなぞった譜面がだいたい難易度の基準になります。

 曲によっては最後だけ極端に難しかったり、逆に最後だけ極端に簡単だったりするかもしれません。
その場合、編曲やミックス、作曲段階から見直すか、もしくは手を加えずそのまま作ってしまう必要があります。
一見前者を選ぶべきだと思いがちですが、譜面制作に慣れていない段階では後者を選ぶ方が無難でしょう。
望ましい譜面にあわせて曲を作り直すという行為は、リスキーです。
ある程度BMSを作り慣れるまでは、行わない方が曲のためになります。

・譜面は何個作ればいい?

 BMSを出す時に気にしたくなるのが、譜面数。
新しくBMSを出す場合は3つ揃えなければいけないと考えている方も多いかもしれません。
しかし、大抵のBMSにおいて3つという数は多過ぎます。
少ない選択肢から3つを作り、かつ差別化させようとすると、本来持たせられたはずの特性を活かしきれない譜面ばかりになってしまいます。

 慣れていない内は適正難易度の譜面に全力を尽くし、
余裕があれば簡単な譜面を作るあたりが無難な配分でしょう。
適正難度より難しい譜面は、基本的な考え方だけで対処出来ないケースが多いので、作らないのが無難です。
プレイヤーは難しい譜面を選びがちなので、なおさら残念な譜面を作るわけにはいきません。

・音の高低を反映させる

 お手元の鍵盤楽器を見てみましょう。お手元に無い場合は想像してみましょう。
左の鍵盤を鳴らすほど低い音が出るでしょう?
それと同じく、低い音は左に、高い音は右に配置するのが無難です。
前に出てきた音階と同じものが出てきた場合は、前に出てきた音と同じレーンに置くのが無難でしょう。

 音階が広くて譜面に収まりきらない場合も、直前直後のノートとの比較だけは反映させましょう。
また、音の重心を使って左右に振り分けることで、ブレイクビーツなどの配置にも応用することも可能です。

・パンポットに合わせて配置する

 音が左から流れてくるならば左側に、右から流れてくるならば右側に配置するのが無難です。
前項で挙げた音の高低を反映させると被った場合、大抵はこちらを優先した方が分かりやすい配置になります。

・一度決めた配置は出来る限り守る

 リズムパートは一度配置するレーンを決めたら、そのレーンにしか置かないのが無難です。
他のパートを使うと密度が一気に上がるから、単純なリズム配置しか続けられないという場合もあるかもしれません。
そういう場合はあえてそのまま同じ配置を繰り返す方が、魅力的な譜面になる可能性もあります。

 ただし、一度決めた配置を破らなければならない場合もあります。
それは、連打が追い付かない場合や、複数のパートがぶつかりあう場合です。
複数のパートがぶつかり合う場合はずらすだけで解決する場合もあるので、使うレーン数を抑えられるかは常に考えましょう。
前の配置を忘れるほどに間が空いている場合には、配置が変わっていても許される場合があります。

・スクラッチの使い方

 BMSでも一際目立つ赤いノート、それがスクラッチ。
スクラッチをシミュレートした音のあるBMSはそれを割り当てればよいのですが、スクラッチ音の無い曲も数多くあります。

 スクラッチには他のキーと違う操作を行う必要があることを活かし、極めて目立つ音を入れることが多いです。
キメに使われるクラッシュシンバルやSFX、他にはピッチ変動を伴う音や逆再生音を入れるのが無難でしょう。
アタックが遅い音も、スクラッチにならば似合うかもしれません。

・音階をリセットする

 音がどんどん高くなってゆく場合、鍵盤が足りなくなるケースも多々あります。
そのようなシーケンスを上手く配置したい場合、どこかで音階をいったんリセットする必要があります。

 違和感無くリセットが行える場所は、フレーズの境目もしくはアクションの境目です。
どちらも十分に演奏を行わない時間がとれるため、いきなり配置が換わるという印象を薄れさせることが出来ます。
逆に言うと、横に広い上に縦にも隙間の無いシーケンスは、譜面には非常に落とし込みにくいです。
そういうシーケンスに対しては、小節単位で少しずつ音階をリセットするのが無難でしょう。

・キー音を詰め過ぎない

 "音もあるし、レーンに余裕もある。ならば詰めてしまおう。" とは誰もが思うかもしれません。
しかし、曲のメリハリに見合わぬ密度を詰め込んでしまっては、楽しめるものも楽しめません。
自分の腕前より簡単な譜面の場合、プレイ中手持無沙汰に感じることもあるかと思いますが、我慢しましょう。
プレイするパートを増やすのは非常にリスキーな行為です。

・音をまとめる

 曲の適正難度にあわせて作った譜面が一番楽しいのは確かですが、
簡単な譜面を作って幅広いプレイヤーに楽しんでもらえるようにするのも重要です。
密度の高いパートでも、音をまとめて1回の打鍵で複数の音が鳴るようにすれば、少ない打鍵数でパート全てを鳴らせるようになります。
また、和音を1つの音にまとめると、音量やタイミング等のバランスを崩すことなく綺麗に鳴らせるようになります。

 時間軸で音をまとめる場合は、おもにワンアクションもしくはワンフレーズで区切ってまとめます。
変なところで区切ってしまうと、逆におかしくなるので気をつけましょう。

・音のまとめ方

 自分の曲でまとまった音を作る場合は、書き出し時にまとめたい単位で書き出すとよいでしょう。 そのため、ここから先は、差分譜面を作る方向けの内容となっております。 差分譜面を作るにあたって必要な場合は、BMX2wavを使います。

音を配置する  BMX2wavを使う場合は、まずコピーしたBMSファイルからまとめたいフレーズ以外を消して、前後にある程度の隙間を作ります。

 そのファイルをBMX2wavに読み込ませて、書き出します。その際、音量タブの "ノーマライズ" を "やんない" に設定します。
そうでなければ、ボリュームが自動で調整されて悲惨なことになります。
音を書き出す

 書き出されるファイルは1つしかないため、複数のキー音を作った場合は切り分ける必要があります。
切り分けるツールは沢山ありますが、今回はFLStudioについてくるEdisonを使って音を分けます。

 Edisonを起動したら、黄色い枠で囲まれたボタンを押すだけで、自動で音を分けてくれます。
ただし、音によってはそのまま切り出すと、音の先端よりわずかに遅れて切れます。そうなった場合、終端でプチっと音がします。
それを避けるためにも、分けた後は一番左のマーカーをわずかに左へずらしましょう。
音を分ける

 音の切り出しを終えたら、音の前後にある余白を消す必要があります。
この作業には、SoundEngine Freeを使うのがお勧めです。
既に切られている後の音源をまとめただけなので、残響などの処理に気をつかう必要はありません。無音部分だけをカットするだけで十分です。
無音部分を省く

 あとは適当に名前を変更して、定義に追加して既存のファイルと置き換えるだけです。
それだけで抜群な効果を得られるわけではありませんが、各音の同期が自動的に行われるようになるため重要です。

・ロングノートの使い方

 最近流行りのロングノートですが、これも使い方一つで印象ががらりと変わります。
パートにおける各ノートのデュレーションを定義して、押すだけでなく離すことにも注目させることが出来ます。
ただし、無難な譜面でなくなるため、基本的には使わないことをお勧めします。

 ただし、ロングノートにも例外として無難な使い方があります。
それは、反復行為を時間軸でまとめてキー音にした場合です。
終端を定義しなければ永遠に続けられる行為であるため、この場合だけはロングノートにすることで終端を明示する方が無難となります。

・やってはいけないこと

 この区間ではこのパートをキー音にすると決めたら、そのパートの音は全てキー音にする必要があります。
パート内の一部の音だけをキー音にしたものは "歯抜けシーケンス" と呼ばれ、
多くのプレイヤーから嫌われています。

 まとめられる音は、全てまとめてしまいましょう。
もしくは、わざわざ難しいパートを使わずとも、もっと簡単に遊べるパートがあるはずです。
それでも無理ならば、その難易度を前提とすることそのものが間違っています。

・トータル値を定義する

 無難なトータル値はありません。しいて言うならば、本体依存にならぬよう値を定義しておくことが無難でしょうか。
それが適切だと感じるかどうかは、テストプレイで確かみてみましょう。

・おわりに

 音楽ゲームにおける主役は曲であり、譜面は曲の持つ特性を主張させられる役割を担っています。
そのため、毒にも薬にもならない譜面であっても、曲の主張を引き出すという意味では十分に有効です。
譜面単体で目立つことが一概に悪いことではありませんが、出来が悪いと例外なく悪い意味で目立ってしまいます。
最悪の場合だと、曲への印象も悪くなってしまうでしょう。

 セオリーを破った配置によってより面白い譜面が出来上がる可能性もありますし、セオリー通りの譜面がほぼ最適解に近い曲もあります。
しかし、セオリーから外れ、かつ気持ち良い配置は、理論立てて話せるものではないため、今回は話題にあげません。

・おまけ

音のまとめ方で実例として使用した、 Nickel and Dimeの14鍵差分譜面を置いておきます。

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